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パン酵母と発酵のしくみ
※調べた覚え書きを順不同に並べている部分もありますので、文章にとりとめがないことをお許し下さい。
私の疑問~パン生地の中で何が起こっているの?
天然酵母パンを作ると、時々酸っぱいパンになってしまいますが、
本などで調べると、パンがすっぱくなるのは「生種の熟成が足りない、発酵時の温度が高すぎる、
生地の練り方など様々な要因が考えられる」等と曖昧にしか書いてありません。
もし理由がわかるならもう少し詳しく知りたいと思い、
酵母の働きについて、少し調べてみました。
* * * * *
酵母(イースト)とは?wildtype
cells (W303 derivative)/Pictures provided by Peter Hollenhorst and Catherine Fox at SGD
酵母とは単細胞の微生物の一種で、長径5~10 μm程度の球形か卵形、レモン型等をしています。かびの菌糸が退化して単細胞で生育するようになったと考えられています。生物の分類上はかびの仲間です。
自然界には多くの種類の酵母が存在しますが、一部の例外を除いて「出芽」によって増殖します。ビール、ワイン、清酒、アルコール、パンなどの発酵食品に利用されていますが、パンに利用される代表的な菌種はSaccharomyces cerevisiae(サッカロマイセス・セレビシエ)。楕円形をしています。ビール酵母(S.uvarum)、清酒酵母(S.cerevisiae)、醤油酵母(S.rouxii)、ワイン酵母(S.ellipsoides)、石油酵母(Candida
sp.)などもあります。ここで注目は清酒酵母とパン酵母は同じ仲間だということ。お酒造りの為の酵母はパン作りにも使えるってことですね!もちろん、他の酵母も使えますが。名前の後半(セレビシエの部分)が違うと何が違うのかは私にはわかりません。
自然界に存在する酵母の中から、パン作りに都合が良い性質を持
ち、乾燥に強いなど保存性に優れたものを選び出し、培養基で培養させたものがいわゆるイースト
(生イースト、ドライイースト)として市販されています。工業的に生産されるイーストにより、
安定した品質のパンを計画的に大量に作ることが容易になりました。
酵母の特徴に、一般の菌に比べて「酸に強い」「糖に強い」「アルコール耐性がある」「低温でも活動する」ということが挙げられます。これを利用して酵母に都合のいい環境を整えてやると、私たちの身の回りの空気中や果物や野菜に付着して棲んでいる酵母を増やすことができます。(自家製酵母の場合、一般的なパン酵母(サッカロミセス・セレビシエ)とは異なる酵母を育てている可能性もあります。アメリカのSGD(サッカロミセス・ゲノム・データベース)の"What
are yeasts?"によると、サワー種ブレッドの野生酵母はカンジダ菌のことが多いとのこと。えーっ?本当?)
酵母はそもそも、土に棲んでいるらしいです(土の中には細菌など大量の微生物が住んでいる)。それで、土埃と一緒に空気中を漂って、果物や野菜に貼り付いて、環境が合えば繁殖します。
たとえば、リンゴ果皮上の微生物は6月から7月にかけては酢酸菌が最も多く、7月の終わりには乳酸菌が一時的に増加し、9月になると未熟果実にはあまり見られなかった酵母(5000/cm2)のみが見られるようになる(「食品微生物学 培風館」)
* * * * *
発酵するって本当ですか♪
「発酵」という言葉を小さな辞書でひくと「酵母や細菌が有機物を分解してアルコールや有機酸を生ずる作用」と書いてあります。ちょっとした化学が載っている本を見ると、アルコール発酵や乳酸菌発酵の化学式が載っているため、発酵という言葉の意味を狭い意味にだけとらえてしまう誤解があります。
実際は、発酵という言葉は主に二種類の使われ方をしています。
・微生物が有機物を分解してアルコールや酸を生ずる作用
・微生物が食品を有用に変質させるという広義の意味。上述の作用の他に、微生物が繁殖して二酸化炭素を生ずる現象が加わる。
これをごっちゃにすると混乱します。前者の「発酵」は生物学的な意味で、後者の「発酵」は食品学的な意味です。
「パン生地の発酵」は後者の意味。生地の中で酵母が繁殖し、増えた酵母が二酸化炭素を吐き出して気泡が増える現象を意味し、アルコールや酸を生ずることではありません。
以上のことを前置きした上で、以下に生物学で言うところの「発酵と呼吸」について記述します。(2005.7.2追記)
発酵と呼吸
パン酵母は、酸素のある状態と酸素のない状態で二つの違う働きをします。
- 酸素のある状態
- {ブドウ糖+酸素}→{二酸化炭素+水} (※「呼吸」と呼び、この時酵母は増殖する)
- 酸素のない状態
- {ブドウ糖}→{二酸化炭素+アルコール}(※「アルコール発酵」と呼ぶ)
レーズンから天然酵母エキスを作るときに密閉ビンを用いると、酵母はビンの中の酸素を使って増殖し、
酸素がなくなったらアルコール発酵を始めます。
アルコールには殺菌作用があり、これによりカビなど雑菌の多くは抑えられますが、
パン酵母はアルコール耐性が強いので、生き残ります。
けれども、新しい酸素が供給されないと
酵母は増えません。
生物学的意味の「発酵」をしている間(アルコール生成をしている時)は、酵母の増殖はストップしているのです。
だから、アルコールが出てきたと喜んでいる場合ではなく、もっと酵母を増やしたい場合は、ビンのふたをゆるめて空気を入れ換え、酸素を補給してやる必要があります。
パンを作るとき、小麦粉と水を混ぜた生地を充分に練るとグルテンの膜が形成され、
空気が通らなくなります。
生地の中の酵母はやがて酸欠状態になり「発酵」を始めます。そのときに生成される二酸化炭素
とアルコールでパンが膨らみ、よい香りがするとういうわけです。
小麦粉中の酵母は生地に含まれるブドウ糖と酸素を取り込んで、増殖しながら呼吸をします。呼吸で吐き出された二酸化炭素はグルテンの膜の中に溜まるのでパン生地の中に泡が生成されます。これが一次発酵です。
酵母の増殖が進むにつれ、泡が大きくなるので、しまいにグルテンの膜が破れたり、酸素がなくなってアルコール発酵をはじめたりするのがいわゆる「過発酵」です。
一度ガスを抜いたり成形したりして酵母に刺激を与えると酵母は一度活動を停止しますが、落ち着いたらまずは呼吸開始。酵母が増殖しているので最初よりも早く膨らみ始めるはずです。
そこでオーブンに入れて焼くと、生地中の水が熱せられて水蒸気になり泡を押し広げて膨らみ、パンが焼けます。(2005.7.2修正)(2019.07.26下線部修正)
※ここで勘違いしやすいのですが、二酸化炭素は温度が上がってもほとんど体積は増えません。加熱で体積が爆発的に増えるのは「水=水蒸気」です。焼成時に生地が焼き固まると並行して水蒸気が発生してパンが膨らみます
一次発酵と二次発酵(成型発酵)で生地を膨らませるのは二酸化炭素、焼成時に膨らませるのは水蒸気です(2019.07.26追記)
* * * * *
糖の分解(でんぷんの糖化)
これだけ聞いて納得はできません。
小麦粉中にブドウ糖はありませんね。
酵母は発酵に必要なブドウ糖をどうやって得ているのでしょう?
糖は、多糖類(でんぷん等)、二糖類(麦芽糖、ショ糖など)、単糖類(ブドウ糖、果糖など)に分類されます。
酵母の直接のエサは単糖類。果物の汁やハチミツに入っています。酵母が多糖類を分解する力は一般に弱く、小麦粉やご飯のでんぷんそのままではエサになりません。
お酒やパンなど、でんぷん質を使って酵母を育てるためには、それを分解する
「酵素」の働きが必要となります。
「酵素」は生き物ではなく、生物の内部で作り出されるたんぱく質の一種で、糖やたんぱく質などの
物質を変化させる働きを持っています(
上述のブドウ糖からアルコールと二酸化炭素が作られる反応も、間には何段階もの化学反応があり、
それぞれに酵素が関連しています。)。
パン生地の中では、パン酵母が持つ酵素(微弱ですが)の他、小麦粉の中に含まれる酵素が作用して、
でんぷんや砂糖のブドウ糖への分解やたんぱく質のアミノ酸への分解が行われています。
ここで生成されるアミノ酸が天然酵母パンの独特の旨みの元とも言われています。
(余談ですが、「酵素」は昨今のバイオテクノロジーの主要ターゲットの一つ。目的に合う働きをする酵素を
作る細菌を研究室で探し、工業的に培養して酵素を取り出し、洗剤、薬、食品などに利用しています。)
酒造りの場合は、コウジカビの持つ酵素を使って原材料のご飯を糖化します。
ビールやウイスキーの場合は、麦芽の持つ酵素の力で麦を糖化します。
一方、ワインの場合は原材料のブドウが酵母の直接のエサになるので糖化は不要です。
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酵母の増殖と雑菌
自家製天然酵母の話を聞いたとき、一般家庭内の雑菌が多い環境で簡単に育てられるということに疑いの気持ちを持ったことはないでしょうか?
だって、瓶の中に果物を入れて何日も放置するんですよ?酵母と一緒に雑菌が繁殖しそうで怪しいじゃありませんか・・・
ここには「ある菌が圧倒的に優勢な場では少数派の菌が勢いをなくす」現象が起きているのです。
従って、雑菌を増やさずに酵母を増やすには、酵母のエサを一度にたくさん与えるのではなく、少しずつ与えて
酵母がいつも優勢でいられる環境を維持することが有効と考えられます。パン作りでいえば中種法です。手持ちの酵母液の勢いが弱い時は小麦粉と水を何段階にも分けて加えて発酵を進めていくといいかもしれません。
発酵を起こす本体が酵母という微生物であることはパスツールの研究によりわかってきました。(パスツールとは1822年~1895年フランスの生化学者。当時、「生物は何もない所で自然発生する」という考えが広く信じられていましたがそれを実験によって否定したのが有名な功績です。その実験で使ったガチョウ型フラスコの絵を見たことがありますでしょうか?)
また、発酵や醸造物に弊害をもたらすのはバクテリアだけではなく、異種の野生酵母の混在によるものであり、野生酵母と培養酵母の混在の中から好ましい培養酵母を取り出して純粋に培養することが質を向上させるということがハンセンにより指摘されています。
野生酵母が発酵に害をもたらすというのは私にとってはちょっとショックです。ただ、ハンセン氏の研究は家庭で作るパンの酵母ではなく、ビール工場での醸造についてなので、必要とされる品質が違うと思うことにしましょう。(これは、野生酵母全般を指すのではなく、キラー酵母と呼ばれる種類の酵母の話の様です。2005.7.2追記)
多種の酵母が混在するよりも、種類が少ない方がいいということだけ信じるとすると、レーズンや果物から採取した酵母は何度もかけ継ぎすることにより純化されていき、安定した発酵を得られる様になるということになります。
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自家製天然酵母の起こし方いろいろ2004.11.10修正
世間にある自家製天然酵母はおおよそ以下の様に分けられるかと思います。(私の勝手な分類です。)
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酵母の採取元
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空気中
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果実、葉、花など
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市販の培養酵母
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酵母のエサ
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単糖類・二糖類
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果実酵母、ハーブ酵母
花酵母、蜂蜜酵母 |
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でんぷん(多糖類)
+分解酵素
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サワー種、玄米酵母 酒種・甘酒酵母
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果実利用サワー種 |
ビール酵母
楽健寺酵母
イースト利用サワー種
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酸の生成
さて、当初の疑問である、天然酵母パンが酸っぱくなってしまう理由ですが、上記の話では酸は生成されませんので、
酵母以外の細菌などによる反応が起こっていることになります。
第一に考えられるのは乳酸菌による発酵です。
乳酸菌は空気中にも存在し、天然酵母と同居して一緒に発酵してパンに風味を与えます。
乳酸菌による発酵は、酸素のない環境で{ブドウ糖}→{二酸化炭素+乳酸}という式になります。
適度の量の酸は風味を加えたり、雑菌の繁殖を抑えてくれて良いのですが、量が多すぎると酸っぱくなります。
乳酸菌の多くは嫌気性ですが、微好気性の菌もあります。
ただし、後で述べるとおり、適度な乳酸菌は必要であり、一概に悪玉とは言えません。
次に考えられるのは酢酸菌による酢の生成です。
酢酸菌は嫌気性の細菌で、アルコールから酢酸を生成します。(酸素のあるときとないときで反応が異なりますが
どちらでも酢酸を生成します)
酵母液を作っている時、酵母がかなり増えて活動も盛んになった状態(いわゆる「過発酵」)をそのまま放置すると、
ビンの中のアルコールが増えすぎ、酵母が弱ります。そのときに、酢酸菌が動き出して酢が作られる様です。
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酵母の臭い
梅シロップの残りを置きっぱなしにしていたら、今日、瓶を開けた時にセメダイン臭がしていました。以前、リンゴジュースで培養した酵母エキスが発酵の勢いが強いときに臭いが出るという話も出てたので、その件について調べてみました。
ネットでセメダイン臭と発酵をキーワードにしたら、山ほどヒット。共通して「酢酸エチル」「エステル」といった用語が含まれているようです。そこで、エステルに絞って調べてみました。
においの元は「エステル」という物質です。エステルは酸(酸素を含む酸)とアルコールの化合物。
酸にも種類が多数あって、アルコールにも何種類もあるので、その組み合わせによって、いろんなエステルが出来ます。
松茸の臭いの元となるエステル、バナナの香りの元となるエステル、リンゴの香りの元となるエステル、、といろいろあるそうです。
以上、参考サイトは「イルカのホームページ」の化学のページより(引用やリンクは自由とのことです)
http://www.urban.ne.jp/home/ichiya/science/chem/ester.html
リンゴジュースや梅ジュースを発酵させた時にした異臭は、酸素がなくなった時に酵母が作るアルコールと、元々の果物に含まれていた酸か、酢酸菌が活動して発生させた酸との化合物でしょう。
セメダイン臭は異臭なので、この一覧表に載っているエステルとは違うかも。または量が多すぎて異臭に感じるのか。それについては後日再調査します。(2005.7.2)
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自家製天然酵母パンを失敗させないために
- 私が思うに、天然酵母パンを酸っぱくしないコツは
- ・酵母を増やしたい時には酸素を与えること(発酵ではなく呼吸をさせる)
- ・発酵完了のタイミングを見逃さない
こと(酸素も糖分もない過発酵状態では酢酸菌がアルコールから酢を作る)
- ・他の細菌が増殖する前に速く酵母を増殖させること
(種おこし初期に温度と糖分に気を配る)
です。
具体的には、エキス作成時には最初にぬるま湯(ただし、40度以下)を使用して眠っている酵母
を起こして活動し易い温度にしてやる。泡が出始めたらこまめに酸素補給をしてやる。
泡の出方が盛んになったら、様子をよく観察し、夏場は早めに切り上げて冷蔵庫に入れる。
(冬場はのんびり見守って大丈夫。逆に、酵母が充分に増えていないのに冷蔵庫に入れたり次のステップに進めて小麦粉を混ぜたりしても、雑菌が繁殖して酸っぱくなってしまいます。)
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乳酸菌は重要な伴侶?
天然酵母パンが美味しい理由は、長時間発酵で生成されるアミノ酸がうまみを醸し出すからと言われています。
しかし、醸し出されるうまみは酵母だけではなく、乳酸菌も重要な働きをしているそうです。
日本酒の作り方の初期工程(「酒母作り)では、乳酸菌を繁殖させて酸性度を上げて他の雑菌を抑えたあとに酵母を添加し、きれいな環境で酵母を増やします。(乳酸菌を添加する「速醸酒母」の利用は最近の方法。古来からの方法では自然に増える乳酸菌を利用した)
赤ワインでは、ワイン中に生存する乳酸菌を働かせてリンゴ酸を乳酸に変換する発酵(マロ・ラクチック発酵)を行うこともあります。
「
パンがおいしくなるためには植物性乳酸菌の発酵生成物が十分に含まれていることが必要であり、そのためには植物性乳酸菌が発酵という活動を十分に行えることが不可欠です」((株)バイオテックジャパンのWebサイト//www.biotechjapan.co.jp/中の「天然酵母を科学する」より引用)
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上面酵母と下面酵母
酵母について調べていくと、「下面発酵酵母」と「上面発酵酵母」という言葉が出てきました。主にビール酵母や日本酒の酵母の話ですが、パン酵母にもあてはまるのでしょうか。
6~15℃(8~12℃、4~13℃、8~20℃との資料もあり)と比較的低い温度で発酵させ、味が穏やかなものをつくりだすのが下面発酵酵母で、発酵後期に沈殿するそうです。
一方、上面酵母を使用したものは、18~25℃(15~25℃との資料もあり)と比較的高い温度で発酵させ、フルーティな香味成分を多くつくりだします。発酵中に発酵液の表面に泡と共に浮上するそうです。
私がレーズンエキスから採取してフルーツジュースで継いでいる酵母は冷蔵庫に置いている間に底にオリが沈殿しますので下面発酵酵母が含まれているのでしょうか。
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酵母の好きな糖度と酸性度2004.11.10追加
酵母が好きな糖度については正確にはわかりませんが、私の経験上、糖分20%でも増殖しました。
いつも酵母にエサとして与えているリンゴジュースは成分表を見ると200ml(213g)当たり炭水化物が24.5g。リンゴジュースの炭水化物はほとんど糖分と考えられますので計算すると糖分11%。リンゴジュースでは酵母がとても元気に増えますし、20%は多いかもしれません。
果物酵母を起こす場合、大抵の果物は糖度10~20度なので水で薄める必要はなく、生の果物+10~20%蜂蜜水でOKです。
酵母が生育できるpH範囲は4.0~7.5。食品のpHが5.0以上では、細菌の増殖する可能性があるが、それ以下になると酵母が増殖し、さらにpH 4.0以下では、かびの増殖する可能性が大きい。(中村学園「電子図書館」管理栄養士国家試験問題より引用)
酵母は栄養、温度などの条件が最適の場合、1~2時間に一回出芽する。酵母の栄養素はかびと同じであるが、ビタミン要求性のものが多い。至適pHは5~6の間にあり、その至適生育温度はかびと似ている(25℃~32℃)(「現代微生物学 4.真菌」より引用)
主な食中毒菌の最低増殖pHは、サルモネラ菌(5.0)、腸炎ビブリオ菌(5.0)、ブドウ球菌(4.8)、ウェルシュ菌(5.0)、ボツリヌス菌(4.6、型によりさらに低いpHでも毒素を産出する)「食品微生物学(培風館)」より
「しゃんぴによん」さんの助言により、酵母を起こすときのpH測定(酸性度の測定)を行ってみました。
測定日は2004.11.11~14。子供の持っていた酸性雨測定キットを使いました。精度は不明です。ちなみに。pH(ペーハー)とは水溶液の性質(酸性・アルカリ性)の程度をあらわす単位で、pH7を中性、数値が小さい方を酸性とします。酸性はレモン汁(2.5)、アルカリ性は石けん水(7~10)などがあります。
リンゴジュースはpH3.5、リンゴジュースを使った酵母液はpH3.5と4の間、蜂蜜をエサとした酵母液もpH4と酸性度が高いことがわかりました。中種や生地はpH5.5でした。どうやらこれは酵母にとって良い値らしいです。
酵母の好むpHは種類により異なるそうです。レーズンから採取した後、ずっとリンゴジュースで継いでいるとリンゴジュースのpHに適した酵母に純化されていくのかもしれません。
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pH値 |
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りんごジュース
|
3.5 |
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リンゴジュース+酵母エキスを数時間置いてできた酵母エキス |
3.5+ |
蜂蜜水(20%) |
5 |
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蜂蜜水100gにレモンバーム酵母液10gを加えた直後 |
4+ |
上記酵母液を室温において数時間後に完成した酵母液 |
4 |
中種(酵母液+小麦粉を混ぜて数時間) |
5.5 |
|
本練り直後の生地 |
5.5 |
|
* * * * *
泡無し酵母と泡あり酵母
酵母エキスを育てていると、泡が勢いよく立つ時と、静かにしか立たない時があります。同じ酵母エキスでも培養するときのエサの種類によって変わる気がするので、単に溶液に不純物が多かったり粘性が高いかどうかの違うだろうと思っていたのですが、本当に酵母の種類によって違うこともあるそうです。それは日本酒の醸造に使う酵母で研究・採取されました。元々あった種類の酵母の「変異株」を取り出して培養して実用化されています。親株よりも発酵が早く強い上、酒の醸造の時には泡が立たない方がタンクを有効に使えて便利なのだそうです。泡あり酵母は酵母エキス中の炭酸の泡にくっつきやすく、泡無し酵母は泡にはくっついていないそうなので、自分の酵母エキスも泡の下の部分だけをそっとすくいとって培養を重ねれば泡無し酵母になるかも。(酒類総合研究所では「新規泡無し酵母の育種法」という特許を出願中)(2005.7.2)
参考とした本
- 「酒と酵母のはなし」(大内弘造 著)
- 「おいしい微生物たち」(野尾正昭 著/集英社)
- 「趣味の酒つくり」(笹野好太郎 著/農山漁村文化協会)
- 「現代微生物学」(朝倉書店)
- 「食品微生物学」 培風館
参考サイト