基調講演1:穴澤義功「鉄の考古学入門」で面白かったのは、製鉄技術の東回りと西回りと小型化の話でした。
 トルコを起点にして、西回りと東まわりがあり日本へは中国や韓国で発展した東回り技術が導入されました。 たたら製鉄がその粋です。明治初期に西洋文明を受け入れ、西回り製鉄技術の発達したものを入手したわが国は 旧来の東回り技術をベースにし、世界一の製鉄国にりました。

 製鉄技術が日本に上陸した北九州から、漸次東へ進んでゆきます。北海道までの約2千km伝わるのに1400年という 期間を要しました。人の移動を伴う技術の伝播には長い時間が必要だったのです。  わが国に入ると製炭炉も製鉄炉、ふいごにしてもドンドン小さくなり精密になりました。 製炭炉は中国では6〜13mあったものが1mにまで小型化しました。トランジスターの発明や、 昨今の携帯電話が高機能になり小さくなったのも、日本人の古来から持つ特性ではないか?

 基調講演2:高木哲一「中国地方の花崗岩」では砂鉄のもとになる花崗岩について種々のお話を聞きました。 中国地方で良質の砂鉄が取れる理由は、山陰帯と区分される地域に磁鉄鉱を沢山含む花崗岩が多くあり、 特に鳥取花崗岩と呼ばれる岩石は風化作用により良質マサ砂鉄が得られます。磁鉄鉱をほとんど含まない 山陽帯や領家帯の花崗岩では砂鉄はあまり取れません。又、チタンを含む砂鉄はたたら製鉄に不向きなです。
 山陰地方と同様に、良質の砂鉄が取れる三陸地方(釜石や石巻)も、たたら製鉄が盛んになり江戸時代には二大産地を形成しました。

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