隕鉄で作った小刀

隕鉄(宇宙から飛来)で小刀4本 三条の技術で(三条新聞13/8/31号より)

 宇宙から飛来し、地球上に落ちた隕(いん)鉄。このほど、三条の名工の技術で、隕鉄を地金に使った刃物の製造に成功、 30日午後3時から新潟市山田、新潟ふるさと村で開かれている「01さんじょう発道具文化フェア」の 会場で製作発表会を開き、地球上では見られない独特の模様の付いた刃物を披露した。

 隕鉄は太陽系の火星と太陽系との間の小惑星帯から飛来し、地球の大気中でも燃え尽きずに地上に落下した金属のかけらで、 石質のものは隕石と呼ばれる。宇宙空間での冷却速度は百万光年に一度といわれ、それから計算すると 約百五十億年前にも逆上るという。成分はほとんどが鉄だが、ニッケルを多く合み、切断、研磨し、希硝酸などでエッチングすると、 地球上の物質にはない独特の美しい結晶組織が見られる。特にニッケル含有率7%から12%のオクタヘドライトには、 「ウィドマンステッテン組織」と呼ばれる複雑な格子状の美しい組織が見られる。

 このほど、刃物を製造した隕鉄は1836年、アフリカのナミビアで発見されたギボン隕鉄。ギボン隕鉄は 宝石・貴金属販売の三条市元町、パリエ代表の堀川芳幸さん(59)が6年ほど前に入手したもので、 三条市荒町1、池田鑿(のみ)製作所代表の池田慶郎さん(60)が栄町高安寺、三条製作所の岩崎重義さんの監修で刃物を打った。
打った刃物は長さ15センチほどの切り出し小刀4本。ギボン隕鉄にはカーボンが含まれず、 そのままでは刃物にならないため、隕鉄を地金に、鋼を張り付けることで刃物を作ることに成功した。
 隕鉄で作ったぺーパーナイフや模擬ナイフがあるほか、国立博物館には隕鉄を使った日本刀も展示されているが、 それらは刃が付いていないため、実用品として使える刃物は今回がほとんど日本初めてになる。  昨年春に堀川さんが池田さんに製作を依頼。一年ほどで試作品はできていたが、その後、試行錯誤を繰り返し、 このほど完成したことから、「01さんじょう発道具文化フェア」のPRを兼ねて製作発表会を開いた。
製作発表会には堀川さんと池田さんが出席。主催の三条商工会議所職員が三条の刃物の歴史やイベントの趣旨などを説明したあと、 それぞれこれまでの経緯を説明した。
 堀川さんは隕鉄との出合いについて国際宝飾展で隕鉄ナイフが飾られているのを見たのがきっかけと話し、 「6年前に隕鉄を入手した。私も三条の住人。これによって商品を作られないか考えたら行き着くところは刃物。 県の技術試験場で検査したらカーボンが入っていないので、刃物にならないと数年間はほおっておいた。 このたび、鍛冶道場に参加して池田さんと知り合い、何とかならないかと持ち込んだ」と説明した。
 池田さんは「隕鉄は柔らかいのでよく伸びる。無理にたたくと離れる危険があって何回も試しながらつけてようやく形になった。 何より失敗したら材料がないから最後まで気が抜けなくて苦労した」と、製作の苦労話を披露。 付いている刃物と同じもので、切れ味同じだが、隕鉄については「ロマンもあるし、神秘的でもある。 模様は今まで見たこともないし、作ろうと思ってもできない。いいものだと思った」と話していた。 堀川さんと池田さん、岩崎さんに、栄町高安寺、諏訪田製作砺の小林知行さんが加わ四人で三栄流星「匠の技」協力会を結成。 今後も隕鉄を使った刃物の研究を続けていくという。

隕鉄で作った切り出し小刀と材料のギボン隕鉄は「01さんじょう発道具文化フェア」の会場に展示している。 同フェアは25日から9月5日まで開いており、期間中毎日、三条の鍛冶人の作品を展示する「さんじょう鍛冶の技展」のか、 三条製品を使ったイベントも行う。(略)

注)他の発表記事によると、この小刀の価格は15万円とのことです。

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