踏みふいご

『赤々と火がもえる、大きな炉のわきで、女たちが、汗だくで、タタラを踏んでいます。
砂鉄を溶かすため、火を絶やさないように、こうして夜通し、空気を送り続けるのです。
「あら、あんた」トキが、アシタカに気づき、声をかけました。「おトキさん、私にも、
踏ませてくれないか」
タタラ踏みは、男のアシタカにとっても、厳しい仕事でした。』 『もののけ姫』の
一場面です。
踏みふいごの構造は、側面と底を粘土で固めた皿状の本体を中央で二つに区切り、
各室に吸・排気弁をつけます。そして、これにぴったりと入る『しま板』を乗せ、
この『しま板』の上下運動で
風を送る仕組みになっています。

『もののけ姫』に登場するタタラ場では『踏みふいご』が活躍していましたが、
高殿と呼ばれる建物の中で製鉄を始めたのは、江戸時代中期で、『もののけ姫』の時代には、
まだありませんでした。
左下の図は『もののけ姫』の場面、右下の図は日本山海名物図会 (1754年) に描かれた、
たたら(ふいご)の図です。


2008年10月13日 絶好の行楽日和り、播磨の古刹『鶴林寺』を訪れました。
数年前に盗難事故に遭った『聖徳太子絵伝』(重文)が取り戻され修復後、
初めての特別展示が開催されていました。展示品リストを購入し、
『聖徳太子絵伝』をこまかく見ていると、踏みふいごと甑(こしき)の絵を
発見しました。
この絵伝は太子信仰の隆盛した鎌倉時代に描かれたものです。

廃仏派と崇仏派が争った時代、阿弥陀三尊像を廃仏派の物部氏が
仏像を壊そうと火に掛けたり金槌で叩いている絵柄です。

参考資料
もののけ姫 徳間書店 1997年
採鉱と冶金 日本評論社 1983年
鶴林寺と聖徳太子




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