『天工開物』に出てくる錨

『天工開物』は中国、明の時代末に書かれた産業技術書。宋応星 著。1637年刊。
農産物・衣服・火器・金属製品などの製造法を挿絵入りの詳細な記述で
体系的にまとめられています。その中の一つに錨の製造法があります。

 航行している船が、風にあたって港に 泊まることがむつかしい時には、錨に船全体の運命がつながれる。
 戦艦や海をゆく船には、錨の重さ千斤のものがある。鍛造の方法は、まず四個の錨爪をつくり、 次々に錨身に接合する300斤以内のものは、直径1尺の広い鉄床
(かなしき)を用い、それ炉の傍にすえる。錨身と爪の端がすっかり赤くなると、炉の炭をとり去り、 鉄をかぶせた棒で挟みながら鉄床にのせる。千斤内外のものでは、木をかけ渡して棚をつくり、 多くの人がその上に立ち、錨に結んだ鉄鎖をいっしょにもって爪を錨身にくっつける。鎖の末端には いずれも大きな鉄輪や鎖止めをつけて、引きあげて捻転させ、力をあわせて打ち鍛えて接合する。
接合剤には黄泥を用いない。まず古い壁土をとって細かくふるい、一人がひっきりなしに、 接目の所にまいてすっかりあわせると、少しの隙間もなくなる。鍛造するものでは、これが最も大きいであろう。
(注. 1斤=約600g)



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