<タイヤの話 1>

 19世紀の中ごろから、自転車や蒸気自動車のタイヤにゴムが使われはじめました。 しかしそのころのゴムタイヤは、現在の子供の三輪車のタイヤのように、中まで全部 ゴムのもので、平らな道を走ってもガタガタと振動が伝わり、乗り心地の良いものでは ありませんでした。右の写真はベンツの1号車で、ソリッドタイヤが使われています。   (トヨタ博物館)
 ゴム引きの布を重ねて作ったチューブに空気を入れ、それを丈夫な皮でおおって 車輪の外側につける考えは、イギリスのトムソンが1845年にすでに特許をえていましたが あまり広まりませんでした。
 1887年、獣医のジョン・ボイド・ダンロップが実用的な空気入りゴムタイヤを作るのに 成功しました。空気入りのゴムタイヤは、数年のうちに、イギリスのすべての自転車に 取りつけられ、1890年代には、アメリカ・ヨーロッパの各地でサイクリングブームが 起こったほどでした。
 空気入りのタイヤは、そのころ発明されたばかりのガソリン自動車の車輪にも取り付け る試みがなされました。しかし、車体の重い自動車に空気入りゴムタイヤを付けることは、 自転車ほど簡単ではなく、人々から不可能だと思われていました。

ゴムのはなし  さ・え・ら書房

もどる 進む