黒塚古墳


 天理市の黒塚古墳で32面もの大量の三角縁神獣鏡と数種類の刀剣が出土しました。 西側のひとふりの刀剣には砂鉄で滑り止めをした朱塗りのさやに納められていたことが 判りました。漆を塗って砂鉄をまぶして接着剤とし、その上から水銀朱を塗りこんでいます。 実用ではなく儀礼用の刀だったのでしょう。
 又、この黒塚古墳では竪穴式石室に赤色の顔料が全面に敷きつめられていました。 床面顔料は水銀朱で、壁面は赤色顔料(ベンガラ)の付着が確認されています。副葬された 刀剣類にも朱が塗られていたことで、魔よけの意味を持つとされる朱を強く意識した "真っ赤な石室" であったことがあらためて確認されました。
 水銀朱はベンガラと異なり、特定の場所でしか産出されません。日本では中央構造線に 沿った地点、伊勢や奈良、和歌山などの山中に多く産します。これは辰砂(しんしゃ)と 呼ばれ、水銀鉱石です。真っ赤なこの鉱石を砕いたものが天然顔料である水銀朱で、加熱 すると水銀を得ることができます。
 黒塚古墳からは、大量の銅鏡、こざねと呼ばれ鎧に使われたと思われる鉄片や鉄鏃 (てつぞく−やじりのこと)や用途不明の鉄が発見されています。これらから、当時の 金属加工技術の高さがうかがい知れます。




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