強い鋳鉄


強い鋳鉄、「球形」に秘密

 鋳型に流し込んで複雑な形に加工できる鋳鉄は、さびやすく、すり減りやすいのが短所。 山本悟・京都大学助手らは、鋳鉄の長所を残し残しながら、さびにくく、すり減りにくい ステンレス球状炭化物鋳鉄=写真、山本さん提供=を開発した。
 この鋳鉄は、鉄にクロム、バナジウム、ニッケル、炭素を混ぜて約1600度で溶かして固める。 火力発電所の排気管をつくって試したところ、ふつうのクロム鋳鉄に比べ、約10倍の 耐久性があったという。山本さんらによると、強さの秘密は、鋳鉄に食まれるバナジウムの 炭化物が球形になっているため。含まれている成分が角張つていると、材料に力を加えたとき、 角の部分に力が集中して亀裂ができ、腐食が進みやすくなる。球形なら力は分散し、粘り強くなる。
 黒鉛を球状にした「球状黒鉛鋳鉄」は実用化されているが、バナジウムの炭化物は黒鉛より硬く、 摩耗に強いものができたという。

朝日新聞 夕刊 2,000年 3月 24日 による

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