焼きばめ


 西部劇に出てくるカウボーイは牛を販売する為、幌馬車に乗って長距離を移動します。木で作られた 車輪は外側に鉄の輪で補強されています。
この輪の取付けは非常に面白く、図のように、完成した木製車輪より少しちいさく作った鉄の輪を、 焚き火で加熱します。熱せられ膨張した鉄の輪を木製の車輪に取付け、水で冷やすと密着しはずれなく なります。このような方法を『焼きばめ』と言います。
 日本でも、お祭りに使う山車(だし)や大八車の大きな車輪は同様の方法で作られます。


焼き嵌めの作業を、松山在住の白鷹幸伯師は、子供のころの回想として以下のように書かれています。

向う鎚(むこづち)を始めたのは九つの時

子供のときから仕事を手伝わされました。九つぐらいからやらされましたね。輪鉄(わがね)をくっつける仕事です。
輪鉄は大八車をゴロゴロ引いているとだんだん伸びるんですが、砂利に当たって少しずつ伸ばされて、ある日突然、カランと外れる。
そうすると、切って、ちょっと短くしてつなぎ替えて、またはめ替えるわけです。それを「輪締め(わじめ)」といっていました。
これは、初めぽすっぽり入らないんですよ。少し小さめに輪鉄が輪木に、はまりきら ず半月形を残すぐらいにしておいて、それから煉瓦(れんが)を積んで、薪で全体を焼く。
焼いて、合わすときには、少し叩いて入るくらい、ストンと入ったらいかんのです。それから水にザボンとっけるとギュッと締まる。
その締まりで、もっているわけです。軍用の大砲を運ぶ車などの車輪は釘で止めていますけど、大八車の輪鉄はキュツと締まっていなくてはならない。
軍用は、道路でなく原野だから釘でいいんです。その輪っかのっなぎ合わせの部分は鍛接、「わかしづけ」といっていました。
輪っかのわかしづけの.場合には、背の小さいほうが向う鎚が当たりやすくて具合がいい。背が低いと打ちやすいのです。

鉄、千年のいのち 白鷹幸伯 著 草思社 1997年 P20 より

 スタッドリンクチェーンのスタッドも、押しつけた食い込みと共に、焼きばめ効果により、リンクに密着させています。

焼きばめ

 熱膨張と収縮を利用して二つの物体を結合する方法。一般に外側に位置する部品を加熱膨張して内径を広げておき、
これに内側部品をはめ込んで常温にもどし外側の収縮によって両者を結合する方法。



  ケルト人の車輪づくり

1.鉄のタイヤを木製の車輪より、少し小さく作る。
2.鉄のタイヤを熱する・・・タイヤは伸びて大きくなる。
3.木製の車輪に鉄のタイヤをはめる。
4.水をかけて冷やす、鉄のタイヤが縮み車輪を強く締め付ける。


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