ふいご 鞴

 金属などを製錬、加工するとき、火をおこしたり、火力を強めたりするのに使用する 簡単な送風装置で、(ふいごう)ともいう。古くは(ふきかわ)(はぶき)とも呼ばれ、 《日本書紀》の天岩戸の条に、シカの皮で(天羽鞴=あまのはぶき)を作ったことが見える。
 その起源は金属器が現れてから、そう遠くない時期と考えられる。日本の鞴は、多く皮袋型で、 タヌキの皮が最上とされたが、しだいに改良され、のち長方形の箱の中を気密に作り、 ピストンを往復させて風を押し出す差鞴(さしふいご)や手風琴型のもの、天秤(てんびん)鞴などが作られた。 また⇒たたら(鑢、蹈鞴)と呼ばれる大型の足踏式のものもあった。動力も手動から、てこ応用の足踏式に進み、 さらに家畜や水車の使用となり、やがて蒸気や電力の利用も行われ、機械的装置となっていった。

 鍛冶屋、鋳物師、石工など鞴を使う職人たちは、旧暦11月8日を鞴祭と呼び、この日は、一日中、仕事を休み、 鞴を清めて、お神酒、赤飯、ミカンなどを供え、守護神の稲荷神を祭った。この行事は、昔、三条小鍛冶宗近が刀を打つとき、 稲荷神が現れて相鎚を打って助けたとか、この日の卯(う)の刻に天からたたらが降ってきたので、その記念に祭るのだと伝えている。  一方、この鞴祭を金山講、金山様祭ともいい、職人の祭日として、戸口に粉糖、コショウ、ニラなどをつるす習俗もある。
  宮本瑞天

国民百科事典  平凡社  1979年

 右の写真は南宮大社(岐阜県)のふいご祭の様子です。(11月 8日)


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