純平(すみひら)鍛刀場    大鍛冶の仕事見学

 2005年11月26日・27日の二日にわたって大鍛冶の仕事を見学させて頂きました。
兵庫県の中央部、兵庫県多可郡多可町中区牧野にある純平(すみひら)鍛刀場です。
真鍋純平さんは、刀の素材である鋼と軟鉄を自分で作られる数少ない刀匠の一人です。
山砂鉄(出雲や千種)と木炭を使い自作の『たたら炉』で氷目銑(こおりめずく)を吹き、 下げ場で蜂目銑(はちめずく)に脱炭させ、本場で包丁鉄に仕上げます。
 妙見山麓の静かな位置、千坪を越える敷地に自宅と鍛刀場、ガレージがあり、
前庭には季節の野菜と真っ赤な柿実っていました。
東は竹林でタケノコの季節には処分に困るほど取れるそうです。

 今回見学させて頂いたのは、刀の芯鉄(しんがね)に使う包丁鉄の製造でした。

通常の包丁鉄は炭素量が 0.1 %程度ですが、刀には0.3 %の鉄が必要なのです。自家製の箱形精錬炉を使います。 寸法は内長30cmx内巾30cmx深さ70cm位の大きさ、炉の底部に粉炭を30cmほど積み上げ一升ほどの水を撒き、 その上に蜂目銑を、火口の前に5cmほど離して、門型に組みます(1kg x 4ケ)。綺麗に大きさを揃えて切断した、 松炭や雑木の炭を使います。点火後、約15分、『鉄が溶け始めましたよ。炎の色が変わり、湧花(わきばな)が出ています。
ぐつぐつと音がします。』真鍋刀匠が言われましたが、ぐつぐつの音は送風音にかき消されて聞こえませんでした。 20分で下げ場の作業は終了。蜂目銑が出来上がりました。(計測によると炉内温度は1400℃)続いて本場、 真っ赤な蜂目銑に藁灰を付け、その上に泥水を付け再び炉内へ、赤熱したそれをこんどは、 ばらばらにならないように注意してハンマーで形を整えます。トントントン、スプリングハンマーが軽い音を出します。 冷えて赤黒くなった鉄塊に灰と泥を付け再加熱、三度目にはハンマーの音も大きくドンドン、包丁鉄(1.2kg x 2ケ)が完成しました。

この間約1時間、4%の炭素量を持った銑が0.3%の包丁鉄に変身しました。
短時間の内に変化する鉄の不思議と古来の技術に感心した時でした。

純平(すみひら)鍛刀場
http://www.eonet.ne.jp/~sumihira/

   

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