船大工への道

お座敷造船所・カヤック製作記

ある日、突然天からの声が脳天に響きわたりました
「汝、海に出なさい!」
我が町、赤穂は海に面した町。
にもかかわらず、今まで海で遊ぼうと思わなかった。
生まれてから一度もカヤックなど乗ったこともない男が
ましてや、一度も船なんざ作ったことがない男が
何を思ったか自らの手で作り始めたウッドンカヤックの
驚異に満ちた製作記である。
設計は自分で一からやるのはかなりの冒険。
プランだけはきちんと実績と信頼のおけるものを購入しました。
以前購入した書籍のなかに紹介されていたチェサピーク社のミルクリーク13というモデルです。
コンセプトがしっかりしており、コンパクトな艇です。
国内では湘南のカナイ設計さんが扱っておられ、プラン1セットにつき、一艇製作できる権利がついています。
まずは場所を確保して(医院の待合室)、耐水ベニアに図面通りのオフセットデーターでパネルの曲線を描いていきます。
バテンという器具を用いてプロットした点をつないでいきます。
とにかく図面はインチで描かれているので大変です。
換算表とミリの書き込みがあるのでなんとかなりましたが、自分でラインを設定するとき、図面への記入は混乱しますね。
ベニアを背中合わせでホチキスで留め、Zソーの日本鋸で描いたパネルの曲線を切っていきます。
まったく同じパネルの左右のセットが出来ます。
切ったあとはこんな感じ。
これだけ見るとどんなものが出来上がるのかさっぱり見当がつきません。
この時点ではかなり不安。
ベニアは短いので、前後2枚のパネルを接合して1枚にします。
スカーフィングといって、斜めにカンナで削って・・・
こんな感じに仕上げます。これらを・・・・
エポキシ接着剤で接着します。
突き合わせの接着では、きれいな曲線がでないそうです。
しんどい作業ですが、手は抜けません。
いよいよそれぞれのパネルを接合します。
この方法をステッチ・アンド・グルー工法と言います。
細い銅線で結わえていきます。
隙間が出来ないように縛ったり、ゆるめたり、削ったり大変です。
が、徐々にボートの格好になっていきますので楽しい時間でした。
100ミリステップで結紮・・・一体何回捻ったことやら。
バウの整形と接着。なかなか格好良い。
実はこの時点で、下のハルパネルが少し長かったのですが、修正しました。
スターンの造形。カヤックというより、カヌーに近い造形です。
ミルクリークの特徴的なデザインです。
私はこの造形は好きです。が、ラダーの装着が少々難儀かもしれません。
バルクヘッドを試適すると全体のデザインがはっきりしてきました。
巾が広いのがこの艇の特徴です。
このステップでは仮のつっぱり棒を押し込んでいます。
この巾が、のちにとんでもない事態をひきおこすとは・・
この段階でまったく気づかず。
台所、いや工作室から出すのに汗かきかき・・・・
パネルをエポキシとグラステープで貼っていきます。
エポキシにウッドフレークを混ぜたものをフィラーにして、グラステープとエポキシで接着しました。
内部の接着が終わると、今度はハル全体をグラスクロスとエポキシでコートします。
強度がぐっと増します。
エポキシのおかげで私のようなズブの素人でも安心してボートを作ることが出来るようになりました。
カーリンの工作です。
初心者に非常にありがたい造形です。
足の出し入れがすごく楽にできます。
また、足元に色々な物が置け、手が届くので船上でごそごそするのにもってこい。
バルクヘッドにはしっかりしたハッチがつきます。
デッキを貼るところ。
本当はちゃんとしたクランプで固定すべきなのでしょうが・・・
結構高価ですので、こんな方法でやっちゃいました。
(設計者が見たら怒るかも・・・)
デッキ貼り完了。
この場所、実は台所で作業しているのです。
椅子もテーブルも端っこに集めて・・・
冬場の作業ですので、屋内でやらないとエポキシが十分に硬化反応を引き起こす温度になりません。
低温型のものを使ったのですが、ファンヒーターでゴンゴンに暖めてもかなりの時間を要しました。
コーミングを接着しました。
シンプルな造形ですが水は侵入しにくいそうです。
(実際、その通りでした。スプレースカートはいらない。)
ずいぶん前方まで開放されており、バルクヘッドまで達しています。
これがミソ!
最前部にマストホールを取り付けてセーリングカヤックにも改装できるのです。
巾が広いとはいえ、所詮カヤック、アウトリガーは必要かもしれません。
デッキにはエポキシを塗りました。
木目がぐっと引き立ちます。
塗装はせず、クリアで仕上げました。
2003年12月28日、進水。
生まれて初めてのパドリングです。
どうなるか?と思いましたがどうにかなりました。
けっこう寒い日で、水温も低く、落ちたらまずいな・・・・と結構最初は引きつり顔。
セルフレスキューの訓練だけしようと思っていましたが、なんやかんやで2時間近く漕ぎまくり、テスト完了。
バルクヘッドの防水も完全で、内部の進水はゼロ。
設計者の言ったとおりの安定性と操作性を確認。
非常に扱いやすい艇で、チンさせようにもグッと抵抗します。
まさに超安定艇です。
今後は海洋調査に活躍するでしょう。
2004年、我が調査艇「ブルーウオーター」は、坂越湾近辺の赤潮発生のメカニズムを解明すべく、ヘテロカプサという赤潮を発生させるプランクトン及び渦鞭毛藻類の採取調査、研究を行うことを主な任務とする。

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