鉄 (金を失うではイヤ)
金属一般は昔からの日本語では「かね」であったが、
中国からそれを言い分けている漢字が伝わると、「銀」は「しろがね」、
「金」は「こがね」(黄金)、「銅」は「あかがね」、そして「鉄」は「くろがね」と言うようになった。
色によって区別しているところが面白い。
「鉄」は、中国最古の字体(古文)では「銕」であるが、秦・漢以降は「鐵」が普通となっている。
右側は音符であると同時に、大きなほこで、その材料としてのくろがねの意であったようである。
戦後の中国の簡体字(「金へん」の形が少しかわっている)、日本の常用漢字では「鉄」と
簡略化されているが、この形は最古の「銕」に由来する。「大臣を更迭する」の「迭」も同じ音符となる。
右側は「失」(うしなう)と系統は異なるが形が同じなので、
「鉄」では「金を失う」という連想が生じ、
人名や会社名の場合、旧字体の「鐵」のままとか、新字体でも
右側を「矢」にして書く人もいる。
(加藤正信)
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(参考図書 漢字の泉 河北新報社 )
「鐵」の文字は鉄の歴史博物館(島根県飯石郡吉田町)
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