埴輪の船 2

最大の船形埴輪(はにわ)出土

 松阪市教委は10日、同市宝塚町と光町にまたがる国史跡・宝塚1号墳(5世紀初頭)から 国内最大の船形埴輪が出土した、と発表した。復元の結果、権力者の象徴である大刀やきぬがさ (貴人がさす日傘)、威杖(王のつえ)など、権威を象徴するものが多数飾られていたことも判明し、 これまで絵画でしか知られていなかった飾りつきの船形埴輪の存在が初めて実物で証明された。 飾りは祭祀などに繰り返し使われた可能性が高く、古墳時代の祭祀の形態を知るための第一級の史料という。
 船形埴輪は全長140センチ、幅25センチ。二つの楕円形の円筒台に乗せられており、 円筒台を含めた高さは90センチ、重さ約72キロ。丸木舟の上に波よけの板などを組み立てた 「準構造船」で、船首と船尾がそり上がったゴンドラ形。大刀や蓋(きぬがさ)、威杖は甲板部分に 開けられた穴に差し込む形で飾りつけられていたとみられる。
 船首と船尾付近にあった4枚の障壁は、王の座を表す心葉形(ハート形)で、船体には、 赤色塗料(べんがら)が付着心ていた。威杖などは発見時は船の内部に収納する形で置かれており、 繰り返し祭祀に使用されたと推定される。

 船形埴輪は、大阪市平野区の長原高廻り2号墳から出土したこれまで最大のもの (全長128.7センチ、重要文化財)をはじめ全国で計29点が出土しているが、 今回のような飾りはなかった。奈良県天理市の東殿塚古墳から出土した埴輪などに、 飾られた船が描かれていただけだった。


2000年 4月11日  毎日新聞による 【田中 功一】 

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