<黒曜石 1 海を渡った人々>

 縄文時代、伊豆半島からこの黒曜石を採取するために丸木舟で危険な航海をした、勇敢な海人族達がいました。 神津島への行きは黒潮に乗ると島の近くまで、割合簡単に行けるようです。しかし、帰りはどうしたのでしょう季節を選び、 海流の色を見、風の向きを調べながら、黒潮の伏流れに乗ったのでしょう。

 こんな危険な航海をしても獲得した黒曜石は縄文時代最良の刃物だったのです。 石と言う名が付いていますが、実は天然ガラスなのです。火山活動で生まれたガラス質の溶岩が水中に入る時、 冷却されて固まりました。神津島の黒曜石はそのため、内部に気泡を含んでいます。 日本では各地で産出しますが、大分県の姫島・長野の和田峠、北海道の白滝、それと神津島のものが有名です。 現在の技術では遺跡から出土する黒曜石の産地が特定できます。神津島の黒曜石は関東一円で使われていました。

参考 『夢通信』  『石の道具』平成13年11月
海を渡った人びと  森 浩一 中央公論社 1989年
神津島観光協会 http://www.fsinet.or.jp/~kouzu/


写真は左から 原石  破面(気泡が見える)  小片(ナイフとして使える)

こくようせき 黒曜石
 流絞岩ないし石英安山岩(デイサイト)に相当する化学組成をもつガラス質の火山岩。
水分の含量が少ない(1%以下)点で、同じくガラス質で多量の水分を含む真珠岩(約4%)や
ピッチストーン(4〜10%)と異なる。黒曜石は黒色、灰黒色、赤色、かっ色でガラス光沢を示す。
軽い打撃によってたやすく割れ、割れ口は貝殻状になる。比重2.4〜2.5。溶岩あるいは火山放出物
として産する。日本では北海道の十勝(十勝石)、長野県和田峠,島根県隠岐島後(馬蹄石)のものが
有名である。鋭利な刃をつくりやすいので、石器時代には小刀、鏃(やじり)斧などの石器の材料として
よく用いられた。 (千葉とき子)  国民百科事典 平凡社 1977年

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