◆街のおかあさんのような存在に
店に並ぶパンは何と約130種類。店主の鈴木誠さんら4人の職人が考案した新商品が、毎日のようにデビューする。1カ月に平均20個の新商品ができ、即日廃番になるものもあるが、最終的には2~3個が定番として残る。地元赤穂の素材を使うと親近感も湧くからと、坂越の牡蠣、赤穂みかん、イカナゴのくぎ煮などを使った商品も多い。
鈴木さんが、最も赤穂を意識して毎年作っているパンが「アコウバーガー」だ。年毎に一人の赤穂義士にスポットをあて、エピソードなどから、そのひととなりを考え、思いを込めてパンで表現する。2012年の商品は寺坂吉右衛門をモチーフにした4代目。吉田忠左衛門が部下の寺坂を息子のようにかわいがっていたところから、親子の情感を鶏と卵で表現し、自家製の塩麹に、ササミとゆで卵を別々に漬け込んだ。本当の義士への敬意を込めて、ライ麦と天然酵母を2日間発酵させ生クリームとバターを合わせた「本物の生地」を作った。鈴木さんは「花岳寺のお墓の前に2時間正座し、話をするんです。そしたらイメージが湧いてくる。赤穂の人に食べてほしいご当地バーガーです」と自信を持って薦める。
「家でお母さんは『おなかすいた~』て子どもが帰ってきたら『ごはんできとるで~』て言うでしょ。うちのパンも、おいしい材料が手に入ったから、おいしいパン作ったで~みたいな、お母さんのような存在になりたいんです。もっともっといろんなパンを作りたいですね」。まだまだ鈴木さんの挑戦は続く。
|