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炎と煙で描かれた瀬戸の景色

赤穂雲火焼

「雲火焼」(うんかやき)は、江戸時代後期から明治時代初期にかけて、大嶋黄谷(こうこく)(1821~1904)が、赤穂の地で生み出した独特の焼き物です。
黄谷が28歳の時、赤穂に逗留していた、江戸今土焼の陶工である作根弁次郎に習って始めたとされます。黄谷は、嘉永5年(1852)に雲火焼の焼成に成功しました。
象牙色の陶膚に橙色、黒色の夕焼け空にも似た美しい窯変が現れているのが特徴で、世に認められましたが、残念ながら、黄谷は陶法を伝える人もないまま亡くなりました。

この幻の雲火焼を20年間の試行錯誤の末、「赤穂雲火焼」として復元したのが桃井香子(よしこ)さんです。
桃井さんは、桃井製網社長だった祖父の影響で、幼い頃から茶道に親しみ、黄谷の雲火焼にも接してきました。復元に本格的に取り組んだのは、造園業を営む長棟州彦さんとの出会いがきっかけでした。
雲火焼の魅力に取り付かれた2人は、土や焼く温度・時間・窯の中の位置など研究を重ね、10年ほど経った頃に、ようやく公募展などで入選する作品ができ始めました。
(公募展で入賞した桃井さんの作品や長棟さんの代表作も並びます)


黄谷の描いた夕焼け空の色が安定して出せるようになった平成5年には県の伝統工芸品に指定され、平成11年5月に「雲火焼展示館 桃井ミュージアム」をオープンしました。ミュージアムは、赤穂御崎の高台にある、桃井製網の元福利厚生施設だった建物。館内には、桃井さんと長棟さんの作品の展示・販売をはじめ、黄谷の作品約20点や桃井家の陶磁器などのコレクションが並んでいます。カフェがあり、ロビー、テラスなどでお茶を飲むことができ、予約制で食事もできます。庭には、義士、プロポーズの丘など、長棟さん作の7種類の水琴窟が各所に設けられていて、その音を聞きながら瀬戸内海の景色を楽しむことができます。


桃井さんは「赤穂雲火焼は、目で見ている景色と同じものを焼き物で描いているのが一番の良さ」と魅力を話してくれます。
「昔の雲火焼と自分たちが復元したものを見比べてほしい」とも。長棟さんは「癒しの水音に耳を傾けながら、ゆったりとした時間を過ごしてほしいですね」とすすめます。 取材日は晴れた日の午前中。作品をゆっくり見て、コーヒーを飲んで、1つずつ水琴窟の音を聞いて、空を見て海を見て・・・。なんとも贅沢な時間を過ごして幸せな気分になったのでした。

桃井さん(右)と長棟さん(左)
赤穂御崎の高台という絶好のロケーションに皆さんも是非足を延ばしてみてはいかがでしょう。

雲火焼展示館 桃井ミュージアム
住所:赤穂市御崎634
TEL:0791-56-9933
開館時間:10:00~16:00
休館日:火曜
駐車場:あり